第五部の『黄金の風』のクライマックスでは、ボスとブチャラティチームが矢の争奪戦を繰り広げますよね。その理由は、矢でスタンドを刺し貫くことで身に付く、レクイエム能力を手に入れるためでした。
結果的に矢はジョルノの手に渡り、発動したゴールド・エクスペリエンス・レクイエムの能力によって、ボスは永遠に死に続けるという最期になりました。
でも、連載当時、一連のこのエピソードを、読んだ私は疑問に思いました。
それは「レクイエム能力だったら、既に吉良が発動してたんじゃないの?」というものです。
ダイヤモンドは砕けないの後半で、吉良はバイツァ・ダストという能力を手に入れます。そして、そのきっかけはやっぱり、矢に刺し貫かれたことでしたよね?
実際にバイツァ・ダストの能力は、吉良の正体を探ったりバラしたりするだけで、相手を爆殺して時間を戻すという、圧倒的な能力でした。
やっぱり、これってレクイエム能力なんじゃないでしょうか?
というわけで、今回はキラークイーンのバイツァ・ダストはレクイエム能力なのかどうかを考えてみます。
レクイエム能力のおさらい
改めてレクイエム能力がどういうものか、おさらいしておきましょう。
スタンドにはその先がある、つまりレクイエム能力があることを発見したのは、ジャン=ピエール・ポルナレフでした。
ディアボロに重傷を負わされて隠遁生活をしていたポルナレフは、ある日、家具の間に矢を落としてしまいました。
ディアボロとの戦いのダメージにより、車いす生活を余儀なくされていたポルナレフにとっては、それくらいのことでも困難な作業です。結局、自分の手では矢に届かないため、シルバーチャリオッツに拾わせようとしました。
その時、シルバーチャリオッツは、うっかり矢じりの刃の部分に触れて指を傷付けてしまいました。
その瞬間に発動したのが、シルバーチャリオッツ・レクイエムでした。
©集英社文庫「ジョジョの奇妙な冒険 Part5 黄金の風 38巻」P.231
以上をまとめると、レクイエム能力の特徴はこうです。
- 矢によってスタンドが傷付けられることで発現(刺し貫かれなくても良い)
- 矢や本人の意志とは無関係なので、偶発的に発現することもあり得る
- レクイエム能力が発現すると、元の能力は消える
- スタンドから矢を取り除くと、元の能力に戻る(つまり、レクイエム能力は一時的なもの)
うっかり、スタンドに矢が刺さってしまっても、レクイエム能力は発動します。ただし、素質が無い場合は、発動したレクイエム能力は制御不能になってしまいます。
また、スタンドから矢を取り上げることで、レクイエム能力は消えてしまうようです。ポルナレフは、暴走したシルバーチャリオッツ・レクイエムから矢を取り上げることで、レクイエム能力が消えました。
ゴールドエクスペリエンス・レクイエムもスタンドの中から矢が抜け落ちた時に、元のゴールドエクスペリエンスに戻ってしまいました。
©集英社文庫「ジョジョの奇妙な冒険 Part5 黄金の風 39巻」P.232
このようにレクイエム能力は、一時的なもののようです。
これを踏まえて考えた時に、バイツァ・ダストはどうなんでしょうか?
バイツァ・ダストの場合
バイツァ・ダストの発現のきっかけは、吉良吉影の正体が露呈しそうになったことがきっかけでした。
川尻早人に正体がバレて脅迫されてしまったため、彼を殺害してしまいます。そして、岸辺露伴にも川尻早人のことを調査され、再び正体がバレそうになってしまいます。
その極限まで追い詰められた吉良吉影に、矢が反応して彼の腕を刺し貫きました。その結果、発現したのがバイツァ・ダストの能力でした。
©集英社文庫「ジョジョの奇妙な冒険 Part4 ダイヤモンドは砕けない 28巻」P.138
その後、早人と仗助に追い詰められるまで、バイツァ・ダストの能力は持続していました。
以上をまとめると、バイツァ・ダストの特徴はこうなります。
- 矢によって本体が刺し貫かれることで発現
- 矢の意志が必要な模様
- 元の能力も残っている
- 矢が取り除かれても能力は消えない
こうやって整理してみると、実は違うことだらけですね。一番の違いは、矢が刺さる対象が、本体であるということです。
さらにこっちの場合は、能力がちゃんと持続します。
つまり、バイツァ・ダストの場合は、キラークイーンの能力が一段階成長しただけと言えます。
一方でレクイエム能力の方は、別の強力な能力を持ったスタンドに、”一時的に生まれ変わる”というのが、近い表現ですね。
やはり、バイツァ・ダストはレクイエム能力とは、完全に別のものと言えると思います。
ちなみにスタンド発現に関わる弓矢については、こちらの記事にまとめてあります。読むと、より理解が深まりますよ!
ジョジョの奇妙な冒険で、人間にスタンドを発現させるキーアイテムが弓矢です。 ルーツや効果など、徐々に明らかにされていくため、全体を理解するのが結構大変ですよね? そこで、今回はジョジョの奇妙な冒険の弓矢のことを整理してまとめてみました!
実は「黄金の風」の序盤で、ブラック・サバスとの戦闘の際に、ゴールド・エクスペリエンスが思いっきり矢で、傷ついています。
©集英社文庫「ジョジョの奇妙な冒険 Part4 黄金の風 30巻」P.252(ブチ込まれたらレクイエムが発動するのでは…)
この後のシーンでは、康一を助けるために、もろに手のひらを、矢で貫かれています。
ところが、この時にはレクイエム能力は発現していません。ジョルノ自身も「思いっきり痛い」としか言ってません(^^;
物語終盤と違うのは、この時点で矢はブラック・サバスが保持しているということです。シルバー・チャリオッツもゴールド・エクスペリエンスも矢を手放した時点で、レクイエム能力が消失しています。
レクイエムの発現条件には、“スタンドが矢で傷付く”だけじゃなく、“矢をスタンドが保持している”こともあるようです。
まとめ
バイツァ・ダストはレクイエム能力なのかと思いきや、やっぱり別の能力のようですね。
レクイエム能力は、一時的なものですし、場合によっては暴走しちゃいます。
そう考えると、本体を刺し貫いてもらって、成長した方が良いと思います。ただ、こっちは矢に選んでもらわないといけないので、発現条件が厳しいです。
どちらも一長一短ですね…。