メイド・イン・ヘブンはストーンオーシャンのラスボス、エンリコ・プッチのスタンドの最終形です。

宇宙全体の時間の流れを無限大に加速するという、作者の荒木飛呂彦先生いわく、究極のスタンド能力です。

DIOとジョースター一族の長きに渡る因縁は、新しい宇宙を作りだすという結末で幕を閉じました。元を辿ると、ジョースター家乗っ取りを企んだDIOとジョナサンの争いだったわけなので、そんなもんに巻き込まれた、全人類が気の毒です(^^;

というわけで、今回はメイド・イン・ヘブンの能力の考察と、平和的な利用方法を考えるわけですが、そもそもプッチは全人類の究極の幸せのためにメイド・イン・ヘブンを使っています。使用目的が幸福である以上、活用方法を考えるというこのブログの前提が成り立ちません。

というわけで、今回はメイド・イン・ヘブンの能力の考察に加えて、メイド・イン・ヘブンが本当に人類のためになる能力なのかどうかを考えてみます。

私自身がクリスチャンであることを活かし、キリスト教の教義の観点から、プッチの独善性に鋭く切り込んでいきたいと思います。

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もくじ

メイド・イン・ヘブンの能力

メイド・イン・ヘブンの能力は、時間の流れを加速することです。と言っても、加速した時間の流れに乗ることができるのは、本体であるプッチと物体だけです。

プッチ以外の生物は、この時間の流れに“追い付く”ことはできません。”追い付く”と表現したのは、涙や入れ歯、衣服などは、あっという間に蒸発したり朽ちたりするため、身に付けている物は、加速した時間の流れに乗れているようです。

朽ちていく物

©集英社文庫「ジョジョの奇妙な冒険 Part6 ストーンオーシャン 50巻」P.235

メイド・イン・ヘブンの一つ前の形態であるC-MOONが、重力を操る能力であったり、メイド・イン・ヘブンに進化するための条件が、重力の影響だったりすることから、時間加速の能力は重力が影響しているようです。

しかし、特殊相対性理論によると、重力が大きくなると時間の流れは遅くなります。また、特殊相対性理論では、“慣性座標系”というもの分けて考え、同じ慣性座標系の中では、時間の流れ方は同じです。

時間の流れの“速い”“遅い”は、それぞれの慣性座標系間での相対的なものとして考えます。

ところが、プッチ自身は時間の流れが速い系の中にいるのに、老いたり腐ったりしていません。一方で時間の流れが遅い系の人たちが身に付けている物は、腐ったり朽ちたりしているなど、“相対性”がメチャクチャです。

この辺りのことは、物理学者じゃない私には理解不能なので、“スタンド能力なんだから何でもアリ!”の一言で片付けたいと思います(^^;

特徴

メイド・イン・ヘブンは外見は、上半身は顔に時計のようなものが埋め込まれた人間、下半身は2本足の馬になっています。

射程距離は”C”となっていますが、本体からあまり離れて行動している描写が無いため、近距離パワー型としました。

スピードは“無限大”となっていますが、これは時間の流れが遅い慣性座標系から見た相対的なスピードになります。実際のスピードは、C-MOONに準ずる“B”くらいではないかと思われます。

【基本スペック】
項目 評価 備考
破壊力 B
スピード 無限大 実際は”B”くらいか?
射程距離 C
持続力 A むしろ持続力こそ”∞”とするのが妥当
精密動作 C
成長性 A

持続力は“A”となっていますが、宇宙が一巡するほどの気が遠くなる時間、能力が持続します。むしろこちらの方が”無限大”とするのが妥当です。

時間の流れを加速するという宇宙規模の凄まじい能力ですが、同一の慣性座標系という条件であれば、スペックは平凡です。

特殊能力

メイド・イン・ヘブンの特殊能力は、時間の流れを加速するというものです。

しかし、この能力を深く考えてみると、次のような特殊能力を併せ持つと考えられます。

  • あらゆる生物(自分自身を含む)の時の流れを無限大に減速させる。
  • 自分自身の行動速度だけは無限大に加速させる
  • 宇宙一巡後は人々に自分の運命を知覚させる
  • 人々が自分の運命から逃れられないようにする
  • 自分自身だけは運命に縛られない?

まず、時間加速の特殊能力についてですが、徐倫たちから見ると、プッチは猛烈に時間の流れが速くなった世界で行動しているように見えます。

超速度

©集英社文庫「ジョジョの奇妙な冒険 Part6 ストーンオーシャン 50巻」P.161

しかし、プッチ自身が感じる時間の流れは、通常通りのはずです。そうなると、プッチだけは宇宙が一巡するまで、気が遠くなるほど長い時間を経る必要があります。

そう考えると、メイド・イン・ヘブンには、本体に不老不死をもたらすという能力が必要になってしまいます。しかし、原作を読むと、宇宙が一巡した後のプッチがそれほど長い時間を生きてきたようには見えないため、そう考えるのは無理があります。そもそも、いくらプッチでも、そんな長い時間の孤独に耐えられないでしょう。

そのため、プッチ自身の時間の流れも徐倫たちと同じ速さ、つまり無限大に遅くなっていると考えた方が自然です。

しかし、実際にはプッチの行動速度は、徐倫たちには認識困難なほど加速しているため、行動速度だけは無限大に加速していると考えられます。ところが、今度は”移動速度が速い物体は、時間の流れが遅くなる”という、法則との兼ね合いの問題も出てきます。

このように考えると、特殊相対性理論とは矛盾しまくりで、考えれば考えるほど混乱します…。(私の解釈の間違いの指摘や、物理的な解説をしてくださる方、大歓迎です!)

ちなみに宇宙が一巡(厳密には一巡の直前)した後の人類は、自分の運命を感覚的に分かっていました。

また、プッチ自身は、宇宙が一巡した後なら、殺されても良いと発言しています。

このことから、運命を知るための条件は、この2つのどちらかのようです。

  • 宇宙が完全に一巡すること(プッチの生死は無関係)
  • プッチが生存している事(宇宙一巡前)

プッチの発言から、宇宙一巡後は人々は自分の運命から逃れられなくなるようです。しかし、自分だけは“運命に縛られない”と言ったかと思うと“数か月後には、エンポリオを見失う運命”と発言しています。

運命は変えられない

©集英社文庫「ジョジョの奇妙な冒険 Part6 ストーンオーシャン 50巻」P.263

この辺りの細かい特徴は、正直よく分からないため、こちらも自然な解釈をしてくださる方がいると大変ありがたいです(^^;

プッチが絶命した後は、再び宇宙が誕生して、エンポリオだけがこの新しい宇宙に移ったようです。この宇宙では徐倫やアナスイ、エルメェスにそっくりな人たちがいますが、自分の運命を知覚することはできなくなっています。

スティール・ボール・ラン以降は、この新生した宇宙でストーリーが進んでいきます。

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有効度

メイド・イン・ヘブンの使い道は、人類が自分の運命を知って覚悟を持つためです。覚悟を持つことで、究極の幸せが手に入るというのが、プッチの考えのようです。

しかし、メイド・イン・ヘブンの能力には、もう一つ重要な側面である、”運命から逃れられなくなる”というものがあります。

もし、自分の将来が破滅的なものだと知り、それを甘んじて受け入れるしかないのであれば、そこに希望や幸福はあるのでしょうか?

困難や苦しみが予想されていても、それに対してベストを尽くして立ち向かうからこそ、人は努力して成長し、希望や幸福が生まれるのだと思います。

“覚悟”とは、可能性が限りなくゼロに近くても、諦めずに立ち向かう時に生まれるものだと思います。可能性が完全にゼロの状態で持てるのは、“絶望”だけではないでしょうか?

そう考えると、メイド・イン・ヘブンの存在意義は、大いに疑問です。少なくとも私は、有効度はとても低いと思います。

そもそも、聖書にはこのように書いてあります。

神はすべてを時宜にかなうように造り、また、永遠を思う心を人に与えられる。それでもなお、神のなさる業を始めから終りまで見極めることは許されていない。

<コヘレトの言葉3章11節>

運命があるとしても、それを支配しているのは神様です。運命とはここでいう”神のなさる業”だと思います。私たちにはそれを知ることは許されていないのです。

リスク

メイド・イン・ヘブン宇宙を作り直すという、文字通りの神の業を行える能力です。全人類の生活はメチャクチャにされてしまうことは、この上ないリスクです。

しかしながら、シンプルに無敵のスタンド能力ですし、作り直した宇宙が気に入らなければ、何度でも作り直してしまえば良いだけです。

能力のスケールが巨大すぎて、リスクもリスクではなくなってしまうスタンドです。

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悪用度

メイド・イン・ヘブンの能力は、時を加速させるというスケールの大きなものです。

自分だけ超スピードになれば、窃盗行為は容易に行えそうですが、盗んだお金はあっという間に朽ち果ててしまうため、役に立ちません。

宇宙を一巡させれば、金融市場の値動きも分かるのでしょうが、同じことを考える人はたくさんいるでしょうし、そもそも運命が決まっているため、大儲けはできません。

凄いスタンドなんですが、全く悪事には向かないです。

世界への影響

メイド・イン・ヘブンの能力は、言うまでも無く、世界どころか宇宙全体に影響を及ぼします。

ジョジョの奇妙な冒険で、最も影響が大きいスタンドです。

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使い道と活かし方

さてメイド・イン・ヘブンの使い道と活かし方についてですが、未来が分かっても、それを避けることができないなんて、ほとんどの人にとっては、迷惑極まりない能力です。ちょっとだけ時間を進めたいと思っても、宇宙規模での大混乱をもたらすため、事実上使用不可能なスタンド能力です。

多くの人は、メイド・イン・ヘブンが、人類に幸福をもたらすスタンドとは、とても思えないはずです。

本来、神父はキリストの模範に従い、神様の愛を伝えるべき人たちです。ところが、プッチはDIOが残した“天国に行く方法”にこだわり、それが人類が幸福になる唯一の方法と妄信して、それを世界中の人に押し付けてしまいました。

プッチにとっては、DIOや”天国に行く方法”が、”神様”になっていたのかもしれません。そうだとするとキリスト教で最も重い罪である「偶像崇拝」です。

偶像崇拝の怖い所は、自分の間違いに気付かないことです。正しいものを信じて、正しいことをしていると思い込んで、人を傷つけてしまいます。プッチはウェザーが言う通りの「ドス黒い悪」になっていましたが、自分ではその黒さに気付くことができませんでした。

この偶像崇拝は、元を辿ると、青年時代に婦人の罪の告白を聞いて弟が生きている事、その弟が妹と交際している事を知った時から始まります。

この時プッチがDIOではなく、神様を頼り、キリストの模範に従ったやり方で対処していれば、このような偶像崇拝の人生にはならなかったはずです。

ところが、妹が死んだ時に思い出してしまったのはDIOでした。DIOは修道士に、神様の存在を忘れさせました。それほどのカリスマ性を持つDIOは、さすが「ジョジョの奇妙な冒険のもう一人の主役」ですね。

いずれにせよ、メイド・イン・ヘブンは純粋悪のDIOと、偶像崇拝に陥り独善的になったプッチが作り出した、究極悪のスタンドと言えます。

考えてみましたが、こんなスタンドに活用方法は見出せませんでした。

総合評価★☆☆☆☆

メイド・イン・ヘブンは時間の流れを加速させ、宇宙を作り直してしまう能力です。

そもそもこのブログの“世界平和のための使い方を考える”という趣旨を大きく超えてしまっている気がします。

しかし、今の世界、今の宇宙に貢献するという前提で考え、総合評価は★☆☆☆☆としました。

時間さえ加速しなければいいんですが、こんなスタンドを持っちゃうと、魔が差して宇宙を作り直すなんて暴挙に出ちゃいそうです。

人は自分の器以上の力を持つと、自分も他人も不幸にするというのが、私の持論です…。

§メイド・イン・ヘブンが登場する巻(文庫本)§